2022年2月26日土曜日

三江線


2018年3月末でとうとう廃線になってしまった「三江線」の車窓です。

「三次駅」周辺のホテルに前泊し、夜明け前の始発からスタートしました。

年末の冬場だったため、なかなか明るくなりません。

確か一時間ちょっと進んで、漸く周囲の輪郭が見えてきたのを待ちきれずに、シャッターを切った一枚でした。

最初はただの取り損ねと思っていましたが、時間が経った今、あらためて眺めると水墨画のようで、幽玄さが漂う傑作と自画自賛してます。

廃線となり、感傷的になっているバイアスもあります。

浮き世のはかなさと言いますか、「長谷川東伯」の「松林図屏風」に通じる気さえ、厚かましくも感じています。

実は、それを体現するように、この路線の歴史は哀れなものです。

列車は「江の川」に沿って終点「江津駅」まで走り続けました。

川の背景に田園や山々の起伏が広がり、最高級の「川線」の景色を楽しみました。

しかし全通したのは1975年と意外と昔ではありません。

すでに地域は車主体になってますし、国鉄の大赤字も問題になっている時代で、赤字路線の指定を開通時から受けていました。

そのため最初から特急・急行は走らず、本数も少ない鈍行のみでした。

100キロを越える路線でありながら、これでは採算が良くなるはずがありません。

寂しい幕切れとなってしまいました。

次回は車となりますが、廃線巡りにもしっかり訪れたいと思います。

2022年2月19日土曜日

東京国立博物館(表慶館)


写真は「東京国立博物館」を構成する「表慶館」の天井窓です。

エメラルドグリーンよりも更に明るい色調が、白亜の建物内部をより引き立てています。

正門から見ると、真正面にドーンと鎮座する「本館」の左側に位置します。

恥ずかしながら、反対の右側が「東洋館」であるため、建物の印象から勝手に「西洋館」だと、ずっと間違えてました。

明治末期に大正天皇のご成婚を記念して、有名な建築家「コンドル」の弟子である「片山東熊」が手がけたもので、当時の洋風建築を代表する建物として、国の重要文化財に指定されています。

博物館の中でも、ココは所有美術品の常設ではなく、他国の美術品を招いての企画展が多いように思います。

あまり目立たず、しれっと開催している印象ですが、中身はむちゃくちゃ濃い目です。

このときもシルクロードからオリエントにかけての美術品が企画展示されていました。

意外だったのは、緑色の釉薬が多様されていて、「織部焼」に近いものを感じたことです。

茶系の砂漠地帯には「青」とか「緑」は非常に目立ちます。

じっと眺めていると中央アジアを旅したい思いに駆られました。


帰るときにライトアップされていた景観は、格別にお見事でした。




2022年2月12日土曜日

ストーブ列車


まさかこんなタイミングで出会うとは。

「津軽鉄道」の名物列車「ストーブ列車」に、真夏に遭遇してしまいました。

間の抜けた話です。

以前に取り上げた作家「太宰治」の故郷がある「金木駅」から、終点「津軽中里駅」間が未乗区間だったので、そのために青森県まで向かいました。

そして完乗記念に、終着駅界隈の写真を撮っていたら、冬まで休暇中の当該車両に、待避線で出くわしたのです。

この路線の完乗目的とは別に、この列車には底しれぬロマンを感じていました。

車両内に設置されたストーブで、スルメを焼きながら一杯やりつつ、津軽の冬景色を眺めてみたかったのです。

しかし雪化粧もされてない車両を先に見てしまうと、正直微妙な気持ちになってしまいました。

今回は車で訪れたのですが、雪が多い冬は厳しく、鉄路に頼るしかありません。

その鉄路も、最近の事情は乗り鉄にとって世知辛くなってます。

新幹線は料金が高くて味気ないし、「青春18切符」は盛岡から先が第三セクターのため使えません。

昔に多用した日本海ルートも「夜行列車」が廃止されているため、すごぶる不便になりました。

学生時代から貧乏旅行を継続している身としては、鉄道にのめり込んでいく環境が薄れていく気がしてなりません。

コロナの影響も踏まえて、新しい旅のスタイルをしっかり思案せねばと思います。

果たして「ストーブ列車」で、スルメをかじる日が来るのでしょうか?

後悔しないようにトライはしてみたいです。

2022年2月5日土曜日

ラッセル車


乗り鉄として、雪国をウロウロしていると、この赤い車両を時折目にします。

DE15形ディーゼル機関車。

以前取り上げた「弘南鉄道」の雪かき車「キ100形」と比較すると、規格が大きく骨太です。

現役バリバリで、これからの大雪にスタンバイしている緊張感が伝わります。

スコップが縦に取り付けられたような先端はラッセル車の特徴で、自然への力強い備えの証です。

特に日本海側の豪雪地帯を想定した場合、車体に十分な高さと、パワーがないと、雪がかき分けられません。

撮影したのは、東京から上越線「関越トンネル」を超えた、新潟県側にある「小出駅」でした。

日本最高最長のローカル線とも呼ばれる「只見線」の、新潟県側の始発駅になります。

まさしく乗車するために時間をつぶしていたタイミングでした。

この駅と、福島県内陸部「会津若松駅」を結ぶこの路線は、収益的にはとっくに廃線になる水準です。

しかし、冬季に沿線上の道路が通行不能になる懸念があることから、交通手段の確保のため法的に残されています。

まさしくこの車両があるからこその存続かと思います。

このときは拝めませんでしたが、雪煙を吹き上げて、雪上を突き進む雄姿が目に浮かびました。